更新 2021/2/14
咳は医学用語では「咳嗽(がいそう)」と書きます。
食事中、うっかり気管に入ってしまって激しく咳き込んだ経験は誰にでもあると思いますが、このように気道内に入った(溜まった)異物や分泌物を除去するとき反射的に咳が出ます。
これまでなかった咳が出始めたとき、もっとも可能性が高い原因はウイルス感染、いわゆる風邪です。生じて3週間未満の咳を急性咳嗽と呼びますが、多くはこの風邪のような気道感染症です。治りが悪い場合や膿性の(黄色い粘調な)喀痰が混じっている咳の場合には抗菌薬が使用される可能性が高くなります。
3週間以上持続する咳を遷延性咳嗽、8週間以上持続する咳を慢性咳嗽と呼びます。ちょっとした気道感染症の場合、3週間あればたいてい治ることが多いので、この急性期を過ぎた咳(遷延性咳嗽や慢性咳嗽)では疑われる病気も変わってきます。頻度の高いものとして咳喘息、アトピー咳嗽/喉頭アレルギー、胃食道逆流症、感染後咳嗽などが挙げられます。
咳の原因を調べる際には、痰が出る湿った咳(湿性咳嗽)か痰の出ない空咳(乾性咳嗽)かの区別が重要となります。
リウマチ膠原病でも咳が出ることがあり、その多くは間質性肺炎に関連した空咳です。関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、シェーグレン症候群、皮膚筋炎・多発性筋炎、全身性強皮症、混合性結合組織病、ANCA関連血管炎(MPA、GPA、EGPA)、サルコイドーシスなどは間質性肺炎を合併することのある病気として知られています。
薬の影響も忘れてはいけません。高血圧の治療で使うACE阻害薬は体内にブラジキニンという物質が増えることによって2~3割の方に空咳を生じます。また、リウマチ膠原病の方によく使用されるメトトレキサート(MTX)でも頻度は高くありませんが、間質性肺炎による空咳を生じることがあります。
以上で述べたもの以外にも咳の原因は多岐に渡るため自己判断は禁物です。
なかなかよくならない咳が続いているときには早めに医療機関を受診して適切な診断・治療を受けましょう。特にリウマチ膠原病をお持ちの方に生じた新たな咳は要注意ですから、担当の先生に遠慮なく報告して指示を仰ぐようにしましょう。