手足のむくみ(浮腫)

更新 2021/5/25

浮腫とは「むくみ」のことです。細胞外の液体で血管やリンパ管の外にある液体を間質液と呼びますが、医学的にはこの「間質液が増えた状態」を浮腫と呼びます。
一部が局所的にむくむ局所性浮腫と、手・足・顔など複数の部位が左右均等にむくむ全身性浮腫に分かれます。

局所性浮腫は血管性浮腫のほか、局所的な炎症、静脈血のうっ滞、リンパ液のうっ滞などによって生じます。間質液は静脈血やリンパ液の流れとつながっているため、これらの流れが滞ると結果的に間質液が増えて浮腫を生じます。
血管性浮腫はクインケ浮腫とも呼ばれ、特発性(原因不明なもの)以外で遺伝性(HAE)、薬剤性(NSAIDs、ACE阻害薬・ARB、抗菌薬など)などが挙げられます。

局所的な炎症の原因としては感染症(蜂窩織炎)やケガのほか、強い関節炎を生じる膠原病(関節リウマチなど)、血管炎、RS3PE症候群などが挙げられます。
静脈血のうっ滞としては四肢の静脈血栓症、静脈瘤、上大静脈症候群、リンパ液のうっ滞としては術後のリンパ管閉塞などが挙げられます。

全身性浮腫は主に体内水分量の増加、血清アルブミンの低下などによって生じます。
体内水分量の増加は腎臓から尿の排出が効率的にできないときに起きます。代表的な原因は心不全と腎不全です。
アルブミンは血液中で水分を血管内に引き付ける(血管外へ漏れるのを防ぐ)作用があります。血清アルブミンが低下する、つまり血液中のアルブミンが減ることで水分は血管の外へ漏れていき、浮腫を生じます。その原因としては肝硬変(肝臓でアルブミンが作られなくなる)とネフローゼ症候群(アルブミンが腎臓から尿として過剰に、1日3.5g以上排出される)が挙げられます。ネフローゼを生じる病気としては糖尿病と全身性エリテマトーデスが有名です。

全身性浮腫は薬剤、妊娠、甲状腺機能低下症によっても生じることがあります。
薬剤としては前述した局所性浮腫を生じる薬剤のほか、漢方薬が挙げられます。甘草という生薬を多く含む漢方薬を過剰に摂取し続けることで偽性アルドステロン症として浮腫、高血圧、低K血症などを生じることがあります。
妊娠中は循環血液量の増加があり、特に中期以降で赤ちゃんの発育とともに下大静脈が圧迫されることで下半身の浮腫を生じやすくなります。
甲状腺機能低下症では皮下にムコ多糖類(ヒアルロン酸など)が溜まることで浮腫を生じることがあります。水分がメインとなる他の浮腫では親指で圧迫したとき圧痕が数十秒残りますが、ムコ多糖類が原因となる甲状腺機能低下症の浮腫では圧痕を残さないのが特徴です。

その他、両下腿を中心に浮腫を生じるものの明らかな原因が見つからないものを特発性浮腫と呼び、女性に多い傾向があります。

いずれにしろ浮腫を生じた際はまず内科系の診療科で評価を受けるようにしましょう。関節痛や皮疹など浮腫以外で気になることがあったり、リウマチ膠原病の家族歴がある場合は膠原病内科を直接受診してもよいと思います。

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院長
清水 久徳
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