更新 2021/1/27
首・背中・腰の痛みは筋骨格系(脊椎とその周辺)の異常で生じることが多いものの、腰背部痛は内臓の障害によってもしばしば自覚され、大動脈解離・心筋梗塞(循環器)、胸膜炎・気胸(呼吸器)、胃潰瘍・膵炎(消化器)、腎盂腎炎・尿路結石(泌尿器)、子宮筋腫・子宮内膜症(婦人科)など重要な病気も数多く存在します。また、帯状疱疹が出ると皮膚に強い痛みを生じ、紛らわしい場合があります。
筋骨格系の病気としてはケガや腫瘍によるものを除くと、炎症の有無で大きく二つに分かれます。
炎症のない(非炎症の)病気としては主に変性が原因で痛みを生じる脊柱管狭窄症、椎間板ヘルニア、脊柱靭帯骨化症(前縦靭帯、後縦靭帯、黄色靭帯)、びまん性特発性骨増殖症(DISH)などが挙げられます。
炎症のある(炎症性の)病気としては関節リウマチ、偽痛風、強直性脊椎炎、乾癬性関節炎、リウマチ性多発筋痛症などが挙げられます(これらは当院で治療対象となる病気です)。
このうち関節リウマチと偽痛風は脊椎の中で頸部に痛みを生じます。脊椎は手足と違い、基本的に可動関節が少ないため(滑膜が少なく)、関節リウマチは生じません。ただ、頭を左右に振るときに動く環軸関節(第一・第二頸椎の関節)は関節リウマチによる炎症を生じます。また、ピロリン酸カルシウムが沈着し炎症を生じる偽痛風が同部位に生じることがあります(Crowned dens syndrome)。
強直性脊椎炎、乾癬性関節炎はともに脊椎関節炎を代表する病気であり、脊椎全体と骨盤部の仙腸関節まで幅広く炎症を生じるため頸部痛・背部痛・腰部痛のいずれの原因にもなります。
リウマチ性多発筋痛症は頸部から背部、腰部にかけて炎症をともなう疼痛を生じる病気であり、内科や整形外科でしばしば見逃されることがあります。