更新 2020/8/31
多くのリウマチ膠原病では妊娠が可能です
リウマチ膠原病の女性にとって、治療を続けながら安全に妊娠・出産をしたい、という悩みがあります。最近は少ないと思いますが以前は、膠原病だから一生妊娠してはいけないと先生に言われている、という妊娠可能な病気の患者さんもいらっしゃいました。
リウマチ膠原病のすべてが安全に妊娠・出産できるわけではなく、現在においても肺動脈性肺高血圧症はよほどの軽症でない限り母体・胎児ともにリスクが高いため妊娠は禁忌とされています。その他にも重度の肺障害や腎障害をお持ちの方や動脈血栓症の既往がある方などはリスクが高く、妊娠は勧められません。
つまり、これら一部の方々以外は、妊娠可能な薬剤で病態を安定させることができればみなさん妊娠が可能であると言えます。
一方、女性の妊孕力(にんようりょく、妊娠する能力のことでこれが欠如することを不妊という)は年齢とともに徐々に(特に35歳以降)低下し、45歳以降での自然妊娠は非常に難しくなります。
早い段階から妊娠を見据えた治療を
リウマチ膠原病においては病気ごとに対応が異なります。
関節リウマチの場合は病態が不安定であった場合、炎症などの影響で妊娠しづらくなる場合がありますが、妊娠によって関節リウマチそのものが落ち着く傾向にあります。
一方、全身性エリテマトーデスの場合は病態が不安定であった場合、母体・胎児にリスクが生じる可能性があるため少なくとも半年間安定していることが妊娠を許可する条件となります。その他の病気においても個々に注意点があり、適切な対応が必要となります。
例えば、30代後半の全身性エリテマトーデスの患者さんが妊娠を思い立ったものの、妊娠に不適切な薬剤で治療していたとします。この場合はまず安心して妊娠できる薬剤のみに切り替える必要があります。複数の薬剤を用いているときや、そもそも病状が安定していなかった場合などは、限られた選択肢の中からその方に合う薬剤を見つけ出し、病態を安定させてから約半年間経過をみて、落ち着いていると判断できて初めて妊娠の許可を出せます。前にも触れましたが30代後半では妊孕力が日々低下していきますので、この半年から1年という期間は妊娠を望む女性にとっては大変苦しいものとなります。
このようなことにならぬよう、普段から医師と患者双方がコミュニケーションをとりあい、妊娠希望であれば先手を打って妊娠可能な薬剤のみで治療していけばよいのです。もし妊娠適齢期の患者さんに対して妊娠の可能性を聞いてこない先生にかかっておられるなら、ご自身で積極的に妊娠希望であることを伝えなければなりません。
外来に通ってくださるリウマチ膠原病の患者さんが妊娠・出産して元気なお子さんとともに母となる姿を見られることは、我々医師にとっても大いなる喜びであり、日々の活力になります。
ぜひ、先生とともに病気を乗り越えて(病気と上手に付き合って)、元気なお子さんの姿を先生に見せてあげてください。